ARCHICAD BIM事例レポート 特別インタビュー
住田町新庁舎(岩手県)[2016年 BCS賞受賞]

住田町庁舎外観

住田町庁舎外観

森林・林業日本一をめざす「木の町」が
BIM をフル活用し純木造の町役場庁舎を建設

「森林・林業日本一の町」にふさわしい新庁舎

住田町は岩手県東南部に位置する人口6,000人ほどの町である。四方を600~1,300m級の山々に囲まれて森林面積は3万haを超え、町の総面積の約9割まで森林によって占められる緑豊かな地域として知られている。住田町では早くからこの森林資源を活かし、木材加工施設の整備を進めるなど、「森林・林業日本一の町」を目指して官民一体の取り組みを推進してきた。近年は木材流通システムの充実とともに、FSC 森林認証制度や木質バイオマスなど環境に配慮した新しい林業施策にも取り組んでいる。そんな住田町に、いま全国の注目を集めるユニークな建築物がある。2014年7月に竣工した「住田町庁舎」だ。

人にやさしく親しまれる庁舎」「環境にやさしく防災の要となる庁舎」「住田町らしさを発信する庁舎」という3テーマに基づき、2012年から計画が進められた施設である。地上2階建て延床面積2,883㎡の純木造建築は、木の太い柱と梁で構成された伝統的木造建築の意匠を強調しながら、同時に先端的デザインのレンズ型トラス梁やラチス耐力壁が印象的で、まさに森林・林業日本一を目指す住田町にふさわしい庁舎といえる。しかも、総数量710,7㎥(スギ247.7㎥、カラマツ463㎥)の木構造部のうち、実に71.5%余が町内産材で賄われ、さらには建設に関わるあらゆる工種で住田町内企業が施工に参加。まさに町内産の木材で町内の企業が建てた、新しい「地産地消」の取り組みでもあったのだ。

こうしたさまざまなチャレンジが内外の注目を集め、完成後の住田町庁舎は竣工後約1年半で102件1,359人(2014年8月~2015年12月)もの視察を受け、建築業界紙等にも多数紹介された。また「第18回木材活用コンクール」農林水産大臣賞や「平成27年度 木材利用優良施設表彰」林野庁長官賞等、数々の受賞にも輝いている。

高難度のプロジェクトに BIM の活用で対応

このように各界から高く評価された住田町新庁舎は、官庁工事としては珍しく、公募型プロポーザル方式による設計・施工一括発注された。大手ゼネコンをはじめ有力企業が顔を揃えた同プロポーザルを勝ち抜き、受注を勝ち取ったのは、前田建設工業を中心に、長谷川建設、中居敬一都市建築設計(設計協力:近代建築研究所、ホルツストラ)によるJV だった。技術には定評ある前田建設だが、そんな同社にとっても本プロジェクトはきわめてチャレンジングなものとなった。前述の通り、ほとんど前例がない純木造の大規模公共建築という大前提はもちろん、発注者からはさらに難度の高い要望が次々と寄せられ、これまた前例のない巨大なレンズ型木造トラスの梁やラチス耐力壁など、新規性の高い技術が必要となった。また、前述の通り木材や施工者まで含めた大規模な地産地消の取り組みも求められ、あらゆる面でハイレベルな対応が必要となった。前田建設では従来のARCHICAD によるBIM の運用に加えて、新たに木造に特化したBIMの利活用を試みた。

ここでは、この「住田町庁舎建築プロジェクト」に関わった方々に、本プロジェクトにおけるBIM と ARCHICADの活用について具体的な内容とその効果について伺った。取材させていただいたのは、発注者である住田町町長の多田欣一氏と、設計施工の前田建設工業株式会社の綱川隆司氏。そして、設計担当の株式会社中居敬一都市建築設計の平谷伸吾氏と、集成材の加工・建て方を担当した株式会社中東の宮越久志氏・芳賀賢二氏である。

Profile
住田町役場庁舎
規模 木造地上2 階(敷地面積7,881㎡ 建築面積2,419㎡ 延床面積2,883㎡)
工法 耐力壁軸組工法、レンズ型木造トラス構造 耐力安全性の分類 耐震基準値I 類(1.5 倍)
木構造部数量 710.7㎥:杉(柱・母屋・ラチス壁・間柱)247.7㎥/唐松(梁・土台)463.0㎥
工場ユニット レンズ型トラス梁270㎥、ラチス耐力壁73㎥
工期 2013年8月1日~2014年8月31日
HP

http://www.town.sumita.iwate.jp/

【発注者】住田町町長

BIM を活用して設計、施工、地元と緊密に連携!
「森林・林業日本一」を目指す町のシンボルを作る

住田町庁舎建設計画のきっかけは築50年余を経た旧庁舎の老朽化だった。東日本大震災時、倒壊の恐れから庁舎内に対策本部が設置できなかったことから、新庁舎建設が求められたのだ。庁舎の構造や設備、機能は検討委員会が中心となってまとめられたが、「木造」とすること、「森林・林業日本一」を目指す住田町のシンボルとすることは当初からの大前提だったという。これを主張し主導した最大の推進役、住田町町長の多田欣一氏にお話を伺った。

多田 欣一 氏

岩手県 住田町
町長
多田 欣一 氏

■木造公共建築のショールームとして

――落成後1年半ですが使い心地はいかがですか
たいへん満足しています。もちろん「ああすれば良かった」という箇所もありますが、総じて満足度は非常に高い。特に「木の良さを活かす」というテーマは高いレベルで実現されました。これは私一人でなく、職員や町民の方からも「とても良いものを作った」という声をいただいています。

――「森林・林業日本一の町づくり」を目指す町だからこそですね
住田町は総面積の90%が森林で、うち約12,000haは町有林です。これは1978年から始めた林業振興計画で、当時の町長が町有の山にスギを植林していった成果。実はこの木を売れば地方交付税なしでもやっていけたはずではありますが、値が下がってしまいできなくなってしまいました。しかし、先輩たちが汗と涙で育てた木が使えないのでは、申し訳が立たない。今を生きる私たちが何か知恵を出さなくてはなりません。とにかくこれらの木を使いたい、という思いから、新庁舎も木造にして全国にアピールしようと考えたのです。

――町長お勧めの「見学ポイント」はどこですか
まず玄関から入ってすぐの木で造った大ホール「交流プラザ」をご覧ください。町民からご寄贈いただいた樹齢100年余のスギ丸太4本を建て、庁舎のシンボルとしてアピールしています。ぜひ町民たちが自ら磨いた大木に触れてみてください。また天井や梁に使われた木も、よく見えるよう「現し」構造にしてあります。地震に強いラチス耐力壁や、この大空間を可能にしたトラス梁などもご注目ください。

――まるで木造建築のショールームですね
さまざまな木の良さを目で見て確かめ、味わってもらいたかったのです。実際、この完成形に至るまで多くの要望を出しました。木造に不慣れな前田建設は大変だったと思いますが、だからこそ私たちの要望にも素直に耳を傾け、地元企業や職人とも協力して素晴らしい成果をあげてくれました。このことは、設計施工一括発注のプロポーザルによる発注先選定の狙いとも共通しています。

■コミュニケーションのカナメ「BIM」

――プロポーザルの狙いとはなんですか
当然、まず設計者と施工者が一緒に行うことで、優れた技術や構造を作りだしてくれるだろうという期待がありましたが、そこで重要なのは、その技術提案に私たちの要望を加えていくことです。設計者任せ・施工者任せで、設計や予算の縛りの中で、私たちが口を挟めなくなるのは嫌でしたから、私たちの要望を設計者・施工者らが一体になって考え、実現に向けて努力していけるシステム作りを目指しました。

――そこで BIM の活用が果たした役割は?
非常に大きかったですね。実はいまも私のパソコンに、前田建設からもらった庁舎のモデル等の資料が入れてあります。ARCHICAD で作られたこの資料が、打合せなどでの幅広いコミュニケーションに役立ちました。私たちの場合、図面やスケッチを見せられてもなかなか具体的なイメージが湧きませんからね。今回はこの資料が使えたので、私たちも細部にわたる要望を具体的に伝えられたと思っています。

――ARCHICAD の BIMx のデータですね
そうです。パソコン内のこれを自分でグルグル回したり、ウォークスルーで階段を登ったり……世の中にこういうものがあるとは聞いていましたが、実際に計画中の建物を早い段階からつぶさに見られたのには驚きましたし、大きくイメージが広がったのは確かです。今になって見直しても、資料の通りに出来上がっているなあ、イメージ通りだなあ、と思います。今後は少し大きな建物の計画では、ああいったシステムが必須になっていくのではないでしょうか。

――データはいろいろと2次活用もされたとか
ええ。誰でも観られるよう、着工してすぐ町のホームページに動画を掲載しました。でも、本当はみんなにはあまり見せたくありませんでした。でき上がった時にあっと驚かせたかったので。(笑)

――今後の取組みについてお聞かせください
町としてはやはり企業誘致が重要な課題となりますが、他所から誘致した企業が永久に居てくれるとは限りません。他に利益が出る場所があればすぐ移転しまうでしょう。だから私たちは「絶対にそこに留まってもらえる事業体」を作る必要がある。だからこそ「木」が重要なのです。木を扱う事業体なら木の生産地であるここが一番良い場所ですからね。木工団地も、いま構想しているCLT 工場もこの発想が出発点であり、今後もこの姿勢は変わりません。とにかく、日本にとって持続可能な資源は、最終的には「木と水」だけです。皆さんにも、もっともっと山林に目を向けてほしいですね。

4本のスギ象徴木が立つ「交流プラザ」 4本のスギ象徴木が立つ「交流プラザ」
レンズ型木造「トラス梁」 レンズ型木造「トラス梁」
木の香あふれるワンストップサービス窓口 木の香あふれるワンストップサービス窓口
Profile
住田町
場所 岩手県気仙郡
面積 334.84k㎡
総人口 5,865人(男2,849人 女3,016人 世帯数2,234世帯 2016年2月)
隣接自治体 大船渡市、陸前高田市、一関市、遠野市、釜石市、奥州市
町の木 スギ(1985年6月制定)
町の花 アツモリソウ(1985年6月制定)
HP

http://www.town.sumita.iwate.jp/

【受注者:設計施工】前田建設工業株式会社

意匠・構造・設備・備品を統合したフルBIM で
大型木造建築におけるBIM 活用の可能性を拓く

日本のゼネコントップ10の一社である前田建設工業は、いち早くARCHICAD を導入し、3次元設計とBIM へ積極的に取り組んできたBIM 先進企業である。だが、そんな同社にとっても、住田町庁舎建設プロジェクトはきわめてチャレンジングなBIM 案件だったという。前田建設工業でこのプロジェクトの設計を担当した、同社BIM 設計グループのグループ長 綱川隆司氏にお話を伺ってみた。

綱川 隆司 氏

前田建設工業株式会社
建設事業本部 企画・開発設計部 BIM 設計グループ グループ長
綱川 隆司 氏

■初挑戦だった純木造建築BIM プロジェクト

――BIM の取組みで業界をリードし続けていますね
当社の3D CAD 活用への本格的な取組みは2001年からです。当時はまだ「BIM」という言葉自体知られておらず、この分野で3次元といえばCG を連想する時代でした。そんな中で私たちが目指したのは、意匠から構造、設備までカバーする業務フロー改善に3D CAD を活用することでした。BIM という言葉は使っていませんが、目指す所はほぼ同じだったといえます。

――ARCHICAD の導入はいつですか
2003年のことです。当初は汎用3D CAD を使っていましたが、やがて汎用CAD の限界が見えてきて、建築に特化した3D CAD を探していく中で出会いました。3D CAD は他にもありましたが、ARCHICAD は3D モデルと図面間の連携やフロアの概念など私たちが求めていたものに近く、その直感的な操作性も魅力的でした。また、3D オブジェクトをパラメトリックに編集していく3D オブジェクトCAD であることにも大きな可能性を感じました。

――現在のBIM への取組み状況はいかがですか
現状では、ほとんどの物件で何らかの形でBIM や3次元が活用されています。意匠から構造、設備を連携させて施工までフル活用する、いわゆるフルBIM 案件も大きく増えました。引き続き今後もBIMとICT 技術の統合により建設会社としての業態を革新していく――という目標を追求していきます。

――御社にとっても本物件は挑戦だったそうですが
ええ、数多くのBIM プロジェクトを展開してきましたが、これだけの規模を持った純木造公共建築のBIM プロジェクトは経験がありませんでした。このことは施工に関しても同様で、現場所長と職員も純木造建築は初めての取り組みでした。

――その初挑戦にどのような姿勢で臨みましたか
全てにおいて慎重に謙虚な姿勢で取り組んでいきました。発注者の方々の要望に真摯に耳を傾け、設計においては木造建築に造詣が深い先生方に教えを請い、施工では木の扱いについてその道のプロである住田町の職人さんたちにアドバイス頂き、全て勉強のつもりでやらせていただいたのです。結果としてこのやり方が功を奏し、大きな成果を上げられたのではないかと思います。

■木造こそBIM の活用に適している?

――住田町庁舎でのBIM の取組みをご紹介ください
本件におけるBIM 活用目的は大きく4つあります。まず、ビジュアライゼーションを活かし発注者様の承認をスムーズにいただくこと。設計工程の短縮が狙いですね。次にBIMによって建築と設備を統合し、品質の高い設計・施工を行うこと。3番目は建築モデルや解析など検証への活用。そして、最後に町民の皆さんへの情報開示への利用です。

――そこでの成果をご紹介ください
ビジュアライゼーションの活用は、発注者の皆さんに設計意図を伝えていく上でとても効果的でした。説明会等で建築モデルを使うことで、正しい理解に基づいた要望をいただけたのです。たとえば、本物件ではあえて天井を張らず木の架構を見せるなど「現し」にした箇所が多く、通常では見せない設備機器等も一部露出しています。こうした部分もBIM のリアルタイムウォークスルーでご検討いただき、視認性を含めてスピーディに確認、承認いただけました。

――建築と設備の統合についてはいかがですか
本件はあまり類例のない大規模な純木造公共建築です。発注者の要望で「木の良さ」を全面に打ち出すとともに、耐震基準値I 類(1.5)の最高クラスも実現しています。また木質ペレットを使用するバイオマス熱源を採用する等さまざまな点でチャレンジングな取組みを行っています。BIM においても、意匠モデル、構造モデル、設備モデル、備品モデルなど全てを統合した3次元モデルを活用することで、トータルな設計・施工の品質向上を図りました。

――デジタルモックアップや解析等への応用は?
木軸全体のデジタルモックアップやレンズ型トラス梁のデジタルモックアップを現場での説明に用いました。また本物件の為にBIM と連動した火災避難シミュレーションを開発しました。一方、情報開示については、設計段階で作ったBIM データをムービーに編集し、専用ホームページで一般公開しました。町民の方も竣工後の新庁舎の内外観のイメージを、非常に早い段階から共有いただけたわけです。

――大きな成果ですね
ええ、構造がそのまま意匠になる木造建築におけるBIM の有効性が確認できたのはもちろん、今後の大形耐火木造建築への足がかりにもなりました。実際、この物件以降 BIM 設計グループは立て続けに木造に携わることになり、現在も3つの木造プロジェクトが動いています。ARCHICAD で設計して思うのは木造建築こそ BIM が活きるのかも……。今後の展開がますます楽しみです。

BIMを用いたセクションパース BIMを用いたセクションパース
図面とモデルが一体化されている 図面とモデルが一体化されている
住田町新庁舎建設計画木軸 住田町新庁舎建設計画木軸
Profile
前田建設工業株式会社
本店所在地 東京都千代田区
代表者 代表取締役社長 小原 好一
創業 1919年1月
資本金 234億5496万8254円(2015年3月末現在)
従業員数 2,821名(2015年3月末現在)
事業内容 土木建築工事その他建設工事全般の請負、企画、測量、設計、施工、監理及びコンサルティングほか
HP

https://www.maeda.co.jp

【受注者:設計】株式会社中居敬一都市建築設計

初体験の本格的BIM に建築設計の新しい波を実感

中居敬一都市建築設計は、盛岡市を中心に、地域に根ざした建築設計や地域開発を行う建築設計事務所である。住田町新庁舎の建設プロジェクトでは基本設計と監理を担当。その現場で初めて、BIM の本格的な運用を体験したという。同社代表の平谷伸吾氏に当時の率直な感想を伺った。

平谷 伸吾 氏

株式会社 中居敬一都市建築設計
代表取締役
平谷 伸吾 氏

――BIM の運用現場は今回が初めてと伺いました
BIM という概念については、われわれなりに研究して把握していましたが、実際に触れる機会はなく、今回が初めてでした。この物件を通してレクチャーを受けながら経験できたので、驚きはありましたが戸惑うことなく理解できました。

――BIM のどういう活用法が役立ちましたか?
今回のプロジェクトでは「木」の表現が大きなポイントでした。木造の経験は豊富な当社にとっても経験のない一風変わった木組みや構造が用いられ、これらを理解し把握する上で、BIM のビジュアルな表現がとても役立ちました。特に様々な角度から確かめられるだけでなく、3D プリンタで模型も信じられない早さで制作できる……本当に驚きでしたね。当社はまだBIM 導入まで踏み込めていませんが、早い時期にこれが業界の主流になると実感しました。

――どんな風に使えるとお感じですか
初期段階の設計検討やプロポでのざっくりしたプレゼンテーションなど、われわれのような小規模の事務所にとっても、用途は非常に幅広いと感じています。その後も、BIM を用いたプロジェクトに参加する機会が続いており、当社も必要を感じています。

全体のBIM 架講イメージ 全体のBIM 架講イメージ
Profile
株式会社 中居敬一都市建築設計
設立 1988 年2 月
工法 耐力壁軸組工法、レンズ型木造トラス構造、耐力安全性の分類 耐震基準値I 類(1.5 倍)
資本金 1,000万円
事業内容 建築設計及び監理、建築及び土木の測量ほか
HP

http://www.nakai-net.co.jp

【受注者:集成材加工・建て方】株式会社 中東

BIM データを活かした集成材製作への挑戦

石川県能美市の中東は、集成材を始めとする木材製品の製造販売を得意とする企業である。特に国産材による大断面集成材については、屈指の技術と実績を持つ実力派だ。住田町新庁舎プロジェクトにおいても、プランのかなめとなるレンズ型木造トラス梁等の加工製造から建て方まで担当。その過程で、前田建設提供のBIM データを活用する機会があった。その取組みについて、集成材事業部の宮越氏と芳賀氏に伺った。

宮越 久志 氏

株式会社 中東
常務取締役 集成材事業部長
宮越 久志 氏

芳賀 賢二 氏

株式会社 中東
集成材事業部技術課 課長
芳賀 賢二 氏

――今回は御社にとっても挑戦だったそうですが
宮越氏 ええ。設計についても製作についてもきわめて要求が高く、全てに高い精度が求められました。特にこの構造体をどう図面化しプレカットの機械に繋げるかが問題で、確実に加工データを流せるかどうか技術課で検証を重ねました。

――そこでBIM データを活用されたのですか
芳賀氏 前田建設から当該部分のBIM データをいただきましたが、私たちの工作機に直接繋いでデータとして利用するのはやはり難しく、BIM データをイメージとして用いて確認作業などに用いま した。レンズ型トラス梁など当社にとっても経験のない構造だったので、3D で立体的に見て直感的に形状を把握できたのは非常に有効的でした。

――他にもメリットはありましたか
芳賀氏 実際にポイントが全部取れたのはとても助かりました。 2D 図面だけで形状を認識しようとすると、どうしても押さえきれない箇所や、納まりが理解しきれない部分が出ますが、3D なら全てデータになっているので、細かい所まで解析できます。効率化という意味でも効果は高かったと思いますね。

――どのくらいの効率化が図れましたか
芳賀氏 BIM データを元に、プレカットCAD 用3D データを約3カ月で作れました。以前のように2D であのトラス梁を作っていったら、半年かけても終らなかったでしょう。細工が1本ずつ全部異なるような形ですから、2D では1本ずつ工作図を手描きするしかないし、工場でも手加工するしかありません。BIM を使って3D でプレカットしなければ厳しかったでしょう。……実は前田建設との新しいプロジェクトでは、よりBIMデータを活用することで更に材料を配置する手間をかなり削減できました。

――BIM に関わる今後の目標は?
宮越氏 当社が設計者とBIMを通じて早い段階から協業することで、より業務の効率をあげながら品質も向上できると考えています。それ以外でも、たとえばBIM データから組立て順番を示すビジュアルな説明書を作るなど、活用法はいろいろ考えられますし、できる限りチャレンジしていきたいですね。

木造仕口部分のデジタルモックアップ 木造仕口部分のデジタルモックアップ
Profile
株式会社 中東
所在地 石川県能美市
代表 代表取締役 小坂勇治
事業内容 建設工事の設計施工、集成材の製造販売、木材・木材製品の製造販売
HP

http://www.chuto.jp